日本ビールスタッフの「気まぐれコラム」ビールがあればいつでも幸せ 日本ビールスタッフの「気まぐれコラム」ビールがあればいつでも幸せ

ビールは体にいい健康食品?
【ビールと健康の話】

ビールは「飲むと太る」とか「痛風の原因」などと言われ、健康によくないと思われがちです。しかし、前回のコラム『ビール腹の原因はビールではない』でも書いた通り、ビール自体が太る要因ではないですし、ビールだけに痛風の原因となるプリン体が特別に多いわけではありません。それどころか近年では体にいい飲み物だとも言われているのです。

ビールの主原料である、大麦、ホップ、酵母には栄養素が豊富に含まれていて、体にいい作用をもたらしてくれます。

大麦に含まれるβ-グルカンは、水溶性の食物繊維。これには悪玉コレステロールや内臓脂肪を低減させる働きがあります。

ホップは、昔から民間薬として用いられてきた植物です。女性ホルモンと似た働きをするフィストロゲンが含まれているため、更年期障害を軽減することが知られています。また鎮静作用、催眠作用、抗菌作用、健胃作用、食欲増進などの効果もあるとされています。

しかし、これらの成分がビールに含まれるのはほんのわずか。残念ながらたくさん飲んだからといって効果が期待できるほどの量ではありません。効果がもっとも期待できるのは酵母なのです。

酵母は、麦芽から作られた麦汁に含まれる豊富な栄養素を取り込んで発酵します。そして発酵を終えた段階で、酵母には麦汁の栄養素がたっぷりと吸収されているのです。

酵母の成分のうち約50%がタンパク質です。そこには18種類のアミノ酸がバランスよく含まれていて、体内で作ることができない必須アミノ酸が8種類も含まれています。アミノ酸には代謝を促進したり免疫力をアップする働きがあるので、健康維持にも一役買ってくれそうです。

また、不足しがちなビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、葉酸などビタミンB群も豊富に含まれています。ビタミンB群は、体内に取り入れた栄養素のエネルギー変換を助ける働きがあるので、新陳代謝を活発にする効果も期待されます。新陳代謝がよくなることで、疲労回復の促進や皮膚や粘膜などを健康な状態に保つ手助けにもなります。

さらにカルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。とくにカリウムの量が多く、ナトリウムを体外に排出する作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節してくれます。ちなみに、ビールを飲むとトイレが近くなったり、塩気のあるおつまみがほしくなるのは、このカリウムの働きによるものです。

そんな効果を持つたくさんの栄養素が含まれているビール。紀元前のエジプトや古代ギリシャでは、ビール酵母が薬として使われていたという記述もあるというのですから、体に悪いわけは無いとも言えるでしょう。

ただし一般的なビールは、発酵を止めたり、にごりを取るために濾過され、酵母が取り除かれています。これではせっかくの栄養素を摂ることができません。ですから、おすすめしたいのは酵母入りビール。日本ビールで取り扱うビールのなかでは「ヴァイエンステファン・ヘフヴァイス」や「シメイ3種(レッドホワイトブルー)」が代表的です。

でも、いくら体にいいからといっても飲み過ぎは逆効果。飲む量は適量にしてビールを楽しみましょう!

ビアスタイルを知ろう!<6>
【IPA】

ビールの品ぞろえをウリにしているお店で、よく見かけるのが「IPA」という名前のビール。これは「インディア・ペールエール(India Pale Ale)」の略で「アイ・ピー・エー」と読みます。“インドのペールエール”という意味になるのですが、インドで作られたビールではありません。

このビールが誕生した当時、インドはイギリスの植民地でした。イギリスからインドまでペールエールを船で運んだのですが、イギリスからアフリカ大陸をまわり、赤道を2回またいでインドへたどり着くまでの長い航海で、ペールエールは腐ってしまったのです。

そこで防腐効果の高いホップを大量に使い、ペールエールの腐敗を抑えました。ホップの強い香りと苦みのあるIPAは、こうして誕生したのだといわれています。

今ではこの個性豊かでインパクトのある味わいが人気となり、アメリカを中心としたクラフトビール業界では、一番人気のスタイルとなっているようです。

そんなIPAのなかにも、通常のIPAよりもさらに多くのホップを使用して作られた「インペリアルIPA(ダブルIPA)」、アメリカ産のカスケードホップを中心に作られた「アメリカンIPA」、深煎りモルトを使用して香ばしさと苦みを増した「ブラックIPA」、ベルジャンホワイトをベースとした「ホワイトIPA」など、さまざまなスタイルがあります。

IPAを味わう際は、キンキンに冷やしてノド越しを楽しむというよりは、10~12℃と少し高めの温度で、ホップの香りと深い味わいを楽しみます。

普段飲んでいるビールがちょっと物足りない、そう感じてきたらIPAを味わってみてください。これまでとは違ったビールの楽しみが発見できるかもしれませんよ。

 

あの“ビールの祭典”は
もともとビールの祭りじゃなかった!?
【オクトーバーフェストの話】

世界最大の“ビールの祭典”と言われる「オクトーバーフェスト」をご存知ですか? ドイツの都市・ミュンヘンで開催される、200年以上もの歴史があるイベントで、毎年10月第1日曜日まで、16日間かけて行われます。東京ドーム約9個分という広い会場は屋台や遊園地などが並び、世界中から訪れる600万人以上のビールファンを楽しませてくれます。

そんなオクトーバーフェストで味わえるのが、このお祭りのためだけに作られる「オクトーバーフェスト・ビール」。3月に仕込まれて夏のあいだ熟成される、アルコール度数が少し高めのビールです。冷蔵装置がなかった時代、夏の暑さで腐敗しないようにアルコール度数を高め、ホップの量を多くすることで保存性を高めたのがルーツだといわれています。

このビールを作ることができるのは、公式ブルワリー6社のみで、これをマスと呼ばれる1リットルのジョッキで楽しむのです。

 

そんなオクトーバーフェスト、もともとはビールのお祭りではありませんでした。1810年10月にバイエルン王国のルードヴィヒ皇太子とテレーゼ王女の結婚式のお祝いが、この祭典のきっかけでした。城壁前の緑地では大規模な競馬が行われ、翌年もその緑地で競馬が開催されることになり、ここからオクトーバーフェストが始まることとなります。のちにこの緑地は「テレーゼの緑地」と呼ばれるようになりました。現在もオクトーバーフェストが行われている会場は、ここ「テレーゼの緑地」です。

現在では、世界各地でオクトーバーフェストが開催されています。最近は日本でも人気のイベントとして知られるようになり、全国で開催されるようになりました。ぜひ一度足を運んで本場の味を楽しんでみてください!

 

※写真はイメージ

“ビールの魂”とも呼ばれる
【ホップの話】

ビール作りに欠かせない主原料のひとつ「ホップ」。ビール特有の香りや苦みを作り出すだけでなく、ビールの泡持ちをよくしたり、殺菌作用があったり、ビールに透明感を与えたりする働きもあります。

Green hops

ホップはアサ科カラハナソウ属のつる性植物で、収穫期の8~9月には10mほどの高さに成長します。ビールの醸造に使われるのは、松ぼっくりのような形をした花の部分「球花」です。この球花の中には「ルプリン」と呼ばれる黄色い粒が入っていて、これがビールの香りや苦みの成分になります。

ホップがビール作りに本格的に使われるようになったのは、14世紀ごろから。5000年以上と言われるビールの歴史を考えると、比較的最近のことです。ホップが使われる以前は、ハーブや香辛料を配合した「グルート」と呼ばれるものが使われていました。しかし、ホップのほうが味わいや防腐効果に優れていたことから、徐々に主流になっていきました。

そのホップの特徴を最大限活用して作られたのが「IPA(インディアンペールエール)」。かつて、イギリスから東インド会社に船でビールを運ぶ際、腐敗しないように防腐効果の高いホップを大量に使用して作られたビールです。今ではその強い苦みのある個性的な味わいが人気となっています。

そんなビールの味わいを決めるのに重要な役割を果たしているホップですが、大きく3種類に分けることができます。

ひとつは「ファインアロマホップ」。ほかのホップに比べて香りや苦みが穏やかで、上品な品種とされています。「アロマホップ」は香りが強いのが特徴。味わいは穏やかです。そして「ビターホップ」は苦み成分が多く含まれる品種で、スタウトなどに使われることが多い品種です。

“ビールの魂”と呼ばれることもあるホップ。次にビールを飲むときは、ホップを感じながら味わってみると、今までとは違って感じるかもしれませんね。

ビアスタイルを知ろう!<2>
【エール】

ピルスナーなど日本でなじみ深く、最も飲まれている下面発酵で作るビールを総称して「ラガービール」と呼びます。それに対し、香りとコクが豊かな、上面発酵で作るビールを総称して「エールビール」と呼ぶケースもあります。

しかし、ここではビールのスタイルとしての「エール」を紹介しましょう。

「エール」とはイギリスビールの総称で、もともとはブラウンカラーで高アルコールのナチュラルビールを指しました。しかし現在では「ペールエール」「ビターエール」とさまざまな種類のエールがあります。

「上面発酵」という伝統的な発酵方法で作られており、下面発酵と比べると高温の15~25℃ほどで発酵します。発酵が進むと表面に酵母が浮かび上がることから「上面発酵」と呼ばれています。

エールの中でも代表的なものが「ペールエール」。ペールとは「淡い」という意味で、それまで飲まれていた濃色エールに比べて色が薄かったことから“ペール(淡い)エール”と呼ばれました。それでも現在主流のピルスナーと比べると、色は少々濃いめです。

フルーティーな香りと麦芽やホップの強い苦みは、ビーフシチューやフライドチキンにピッタリの味わいです。