黒ビールはどうして黒い?
【黒ビールの話】
「黒ビール」とは、その名の通り黒色~濃褐色をしたビール。その独特な苦みや甘みに魅せられた人や、淡色ビールと黒ビールを1:1で混ぜ合わせる「ハーフ&ハーフ」が好きだという人も多いと思います。
ではこの黒ビールの黒い色は、一体どのように作られているのでしょう? 淡色ビールと醸造方法が違うのか、それともできあがったビールを着色しているのか……。実はコレ、使われている「麦芽」の違いによるものなのです。
フルーツビールなどを除き、ビールの色は麦芽で決まります。淡色ビールでは、80℃程度で焙燥(加熱によって乾燥させること)された、色の薄い「淡色麦芽」が使われます。対する黒ビールでは「淡色麦芽」に100℃以上の高温で焙煎された「濃色麦芽」が加えられます。
濃色麦芽には、その焙煎方法や温度によって「カラメル麦芽」「クリスタル麦芽」「チョコレート麦芽」「黒麦芽」など、さまざまな種類があります。これらを組み合わせることによって、濃褐色や黒色のビールが生まれるのです。
ちなみに「黒ビール」は、小麦を加えて作られる「ホワイト」と違って、ビアスタイルではありません。スタイルでいえば、下面発酵ビールなら「ドゥンケル」「シュバルツ」、上面発酵ビールであれば「ポーター」「スタウト」が黒ビールにあたります。
同じ黒ビールとはいっても、味わいはかなり違います。お気に入りの黒ビールを探して飲み比べをしてみるのも、楽しいかもしれませんね。
【代表的なドゥンケル】
- ホフブロイ ドゥンケル
- アインガー アルトバイエリッシュ ドゥンケル(樽のみ)
- ヴァイエンステファン ヴァイツェン ドゥンケル
【シュバルツ】
- 弊社取扱いビールに該当品なし
【代表的なポーター】
【代表的なスタウト】
ビールの味わいは酵母で決まる!
【ビール酵母の話】
ビールをはじめ、お酒を作るうえで欠かせないのが「酵母」です。酵母とは5~10ミクロンほどの大きさの菌類で、卵のような形に小さな突起が出ている姿をしています。
酵母は糖類を食べ、酸素があるときは呼吸を行って炭酸ガスと水に分解、酸素がないときは発酵を行って炭酸ガスとアルコールに分解します。酵母の種類のひとつである「ビール酵母」は、このアルコール発酵で大量のアルコールを生産するとともに、優れた味と香りを作り出す特徴があります。
そのビール酵母のなかにも種類があって、大きく「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」に分けられます。上面発酵酵母は15~25℃の温度で発酵し、フルーティーな香りのもとであるエステルなどを多く作り出します。発酵の際に発酵液の表面に浮かび上がる性質を持つことから、このように呼ばれています。この上面発酵酵母で作られたビールを総称して「エールビール」と呼ぶことから「エール酵母」とも呼ばれています。
対する下面発酵酵母は、5~10℃前後の低温で発酵する酵母で、香味成分は多く発生しませんが、キレのある爽やかなノド越しを作り出します。発酵の際に酵母が沈むことからこの名が付けられています。下面発酵ビールは「ラガービール」と呼ばれることから、この酵母は「ラガー酵母」とも呼ばれています。
そんな酵母のなかにも、スッキリとキレのある味わいを生み出す酵母、豊かな香りが特徴の酵母、味に深みを与える酵母など、さまざまな種類があります。その中からどんな特徴の酵母を使うかによって、ビールの味わいも決まってくるのです。
ビアスタイルを知ろう!<5>
【フルーツビール】
「フルーツビール」と呼ばれるビールがあることをご存じでしょうか? その名前からも想像がつく通り、フルーツを使ったビールなのですが、ビールとジュースを混ぜ合わせたカクテルではありません。醸造の途中で生のフルーツやフルーツエキスを加えて熟成させるビールの1スタイルです。
一緒に熟成させずに、できあがったビールに果汁を混ぜて作るものもありますが、ベルギーなどの伝統的な製法では、発酵中に副原料として加えられるものが多いです。使われるフルーツは、チェリー、ラズベリー、カシス、ピーチ、レモン、オレンジ、青リンゴなど、さまざまな種類があります。
味わいはもちろんビールなのですが、その中に使われているフルーツの酸味や甘みがバランスよく含まれていて、とても飲みやすくなります。ビールの苦みがちょっと苦手だという人にも、おいしく飲めると思います。
また、栓を開けた瞬間からフルーツのさわやかな香りが広がり、グラスに注ぐとピンクや紫など、とてもビールとは思えない鮮やかな色合いが楽しめます。この香りと色を楽しむために、フルーツビールはやはりグラスに注いで飲みたいものです。
おすすめは飲み口がすぼまったチューリップ型のグラス。注いだときに香りが立ちやすく、またグラス内に香りがたまりやすいので、飲みながら香りを存分に楽しむことができます。
- 発酵の種類:下面発酵
- 色:使われるフルーツの色による
- アルコール度数:1~5度
- 適温:5~7℃
- 代表的なビール:リンデマン カシス ミニ、リンデマン フランボワーズ ミニ、リンデマン チェリー ミニ、リンデマン ピーチ ミニ
ビールは「発酵」によって
味わいが変わる?<2>
【下面発酵】
ビールは、酵母が麦汁内の糖類を分解して、炭酸ガスとアルコールを生成する「発酵」によって作られます。発酵には「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」があり、その発酵の種類によってビールの味わいも変わってきます。
前回は「上面発酵」を紹介しましたが、今回は「下面発酵」について解説していきましょう。
「下面発酵」とは、発酵後に麦汁内の酵母がタンクの底に沈殿していくことから名づけられた醸造方法。発酵温度が5~10℃と低温で、発酵期間は7~10日間、熟成に1カ月程度時間をかけて作られるのが特徴です。
下面発酵で作られるビールは「下面発酵ビール」や「ラガー」と呼ばれています。19世紀後半に下面発酵ビールが普及すると、たちまちビールの主流となり、今や世界の約9割がこの下面発酵ビールとなりました。「ピルスナー」をはじめ「アメリカン」「ババリア」「ミュンヘン」「メルツェン」「ボック」「スモーク」「スパイス」「フルーツ」といったスタイルのビールが下面発酵ビールです。
キレのある苦みとさわやかなノド越しで、ゴクゴクと飲めるのが特徴の下面発酵ビール。シンプルな味わいなので、さまざまな料理と一緒に楽しむことができます。
<代表的な下面発酵ビール>
- サミエルアダムス ボストンラガー(アメリカ)
- クローネンブルグ 1664(フランス)
- 有機農法ビール(日本)
- オーガニックビール(ドイツ)
- レモンビール(アメリカ)
- チリビール(メキシコ)
ビアスタイルを知ろう!<2>
【エール】
ピルスナーなど日本でなじみ深く、最も飲まれている下面発酵で作るビールを総称して「ラガービール」と呼びます。それに対し、香りとコクが豊かな、上面発酵で作るビールを総称して「エールビール」と呼ぶケースもあります。
しかし、ここではビールのスタイルとしての「エール」を紹介しましょう。
「エール」とはイギリスビールの総称で、もともとはブラウンカラーで高アルコールのナチュラルビールを指しました。しかし現在では「ペールエール」「ビターエール」とさまざまな種類のエールがあります。
「上面発酵」という伝統的な発酵方法で作られており、下面発酵と比べると高温の15~25℃ほどで発酵します。発酵が進むと表面に酵母が浮かび上がることから「上面発酵」と呼ばれています。
エールの中でも代表的なものが「ペールエール」。ペールとは「淡い」という意味で、それまで飲まれていた濃色エールに比べて色が薄かったことから“ペール(淡い)エール”と呼ばれました。それでも現在主流のピルスナーと比べると、色は少々濃いめです。
フルーティーな香りと麦芽やホップの強い苦みは、ビーフシチューやフライドチキンにピッタリの味わいです。
- 発酵の種類:上面発酵
- 色:アンバー 〜 ブラウンカラー
- アルコール度数:4~6度
- 適温:5~15℃
- 代表的なビール:セントアンドリュース、サミエルスミス オーガニックペールエール、サミエルスミス ブラウン