ビアスタイルを知ろう!<3>
【ヴァイツェン】
ビールには「白ビール」と呼ばれる、淡色で白く濁ったビールがあります。「小麦ビール」とも呼ばれ、大麦麦芽だけでなく小麦麦芽も使用して作る上面発酵ビールです。
そのなかに、南ドイツ地方で古くから作られている白ビールがあります。それが「ヴァイツェン」です。小麦麦芽を原料の50%以上を使用することが決められていて、白く濁っていることから「ヴァイス(=白い)」とも呼ばれています。非常に泡立ちがよく、泡持ちがいいのも特徴です。
苦みが少なく、フルーティーでスパイシーな味わいも特徴のひとつです。バナナやクローブ、バニラのような香りとともに、ほのかな酸味、強い炭酸であることから清涼感も感じられます。
ヴァイツェンには、酵母を取り除かずビン内で後発酵させた濁りのある「ヘーフェヴァイツェン」、酵母を取り除いた透明な「クリスタルヴァイツェン」、色が濃い「デュンケルヴァイツェン」、アルコール度数が高い「ヴァイツェンボック」などがあります。
酸味のあるザワークラウトや酢の物、さっぱりとした焼き魚などの料理とよく合うビールです。
- 発酵の種類:上面発酵
- 色:白濁した金色
- アルコール度数:5~5.5度
- 適温:9℃
- 代表的なビール:ヴァイエンステファン・ヘフヴァイス、ヴァイツェンビール
ビールは「発酵」によって
味わいが変わる?<1>
【上面発酵】
麦やホップなどから作られる麦汁のなかの糖類を酵母が分解して、炭酸ガスとアルコールを生成する「発酵」によって作られるお酒がビールです。その発酵には「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」の3種類があり、発酵の仕方によってできあがるビールの種類が変わってきます。
そこで今回はその中のひとつ「上面発酵」について、解説していきましょう。
「上面発酵」とは、発酵が進むと麦汁の表面に酵母が浮かび上がる酵母を使った醸造方法です。発酵温度が15~20℃ほどと比較的高く、3~4日間という短い期間で発酵が終了します。
この上面発酵で作られるのが「上面発酵ビール」「エール」と呼ばれるビールです。非常に歴史のあるビールで、イギリスやベルギーでは、今も多くの人に愛されています。「エール」「IPA」「ヴァイツェン」「ホワイト」「ホワイトカクテル」「トラピスト」「アベイ」「スタウト」「ポーター」が、上面発酵ビールに属するスタイルです。
味わいは、フルーティーなものが多いですが、味や香りに多様性があるのもこのビールの特徴です。長い歴史のなかで、作られてきた地域の風土や生活が反映され、個性的でバラエティーに富んだビールが育まれてきました。
冷やして飲んでもおいしいですが、香りを楽しむために10℃以上の温度で味わうのがいいと言われています。よくビールは“ノド越し”や“キレ”だと言われますが、上面発酵ビールで、芳醇な味と香りをじっくりと味わってみてください。
<代表的な上面発酵ビール>
- クローネンブルグ ブラン(フランス)
- サミエルスミス スタウト(イギリス)
- ヴァイエンステファン へフヴァイス(ドイツ)
- シメイ ブルー(ベルギー)
- 白濁(ベルギー)
- IPA 100(イギリス)
ビアスタイルを知ろう!<2>
【エール】
ピルスナーなど日本でなじみ深く、最も飲まれている下面発酵で作るビールを総称して「ラガービール」と呼びます。それに対し、香りとコクが豊かな、上面発酵で作るビールを総称して「エールビール」と呼ぶケースもあります。
しかし、ここではビールのスタイルとしての「エール」を紹介しましょう。
「エール」とはイギリスビールの総称で、もともとはブラウンカラーで高アルコールのナチュラルビールを指しました。しかし現在では「ペールエール」「ビターエール」とさまざまな種類のエールがあります。
「上面発酵」という伝統的な発酵方法で作られており、下面発酵と比べると高温の15~25℃ほどで発酵します。発酵が進むと表面に酵母が浮かび上がることから「上面発酵」と呼ばれています。
エールの中でも代表的なものが「ペールエール」。ペールとは「淡い」という意味で、それまで飲まれていた濃色エールに比べて色が薄かったことから“ペール(淡い)エール”と呼ばれました。それでも現在主流のピルスナーと比べると、色は少々濃いめです。
フルーティーな香りと麦芽やホップの強い苦みは、ビーフシチューやフライドチキンにピッタリの味わいです。
- 発酵の種類:上面発酵
- 色:アンバー 〜 ブラウンカラー
- アルコール度数:4~6度
- 適温:5~15℃
- 代表的なビール:セントアンドリュース、サミエルスミス オーガニックペールエール、サミエルスミス ブラウン
【ホットビール】
キンキンに冷えたビールは夏の飲み物。だから寒い季節になると、少しビールから離れてしまう、そんな人もいると思います。でもビールの味わい方は、冷やして飲むばかりではありません。温めて飲む「ホットビール」という飲み方もあるのです。
本場のドイツやベルギーなどでは、コクがあってフルーティな上面発酵ビールに、スパイスやドライフルーツ、砂糖などを入れて、50~70℃くらいで飲むのが一般的です。
今回使用したビールは「ダブル エスプレッソ ビール」です。豊かなコクと香りが楽しめる味わいにスパイスと砂糖を加えることで、より濃厚で芳醇な味が楽しめます。好みもあると思いますが、70℃ぐらいのアツアツを味わいながら飲むのがおすすめです。
<作り方>
- ミルクパンなどの小さな鍋に、シナモンスティック1本、クローブ3~4粒、生ショウガのスライス2~3枚を入れ、ビールを泡立たせないようにゆっくりと注ぎます。
- 1を弱火にかけて沸騰直前まで加熱します。加熱の目安は、常温のビール300mlほどなら約5分。
- 火を止めたら耐熱グラスに2のビールをゆっくり注ぎ、角砂糖1個を入れて軽くステアしていただきます。
<おすすめのビール>
- ダブル エスプレッソ ビール (イギリス)
豊かな香りとコクが楽しめる、本物のエスプレッソが入ったポータービールです。