ビアスタイルを知ろう!<7>
【ポーター/スタウト】
前回のコラム「黒ビールはどうして黒い?【黒ビールの話】」で少し触れましたが、上面発酵の黒ビールに「ポーター」と「スタウト」という2つのスタイルがあります。今回はこの2つの黒ビールについて、紹介していきましょう。
「ポーター」は、1722年にロンドンで誕生したビールです。18世紀初頭のイギリスでは、古くなって酸味の出たブラウンエールに、新しいブラウンエールとペールエールを混ぜ合わせた「スリースレッド(3本のより糸)」というビールが流行していました。
しかし、ロンドンのパブオーナーであるラルフ・ハーウッドは、注文のたびに3種類のビールを混ぜるのは面倒だと考え、初めから工場で混ぜ合わせた「エンタイア(ひとまとめ)」というビールを販売。これが大ヒットとなりました。
このビールをとくに好んで飲んだのが、荷運び人“ポーター”であったことからこの名が付いたという説や、ポーターがビア樽を運んできた際に「ポーター!」と叫んだから付いた名だという説があります。諸説ありますが「エンタイア」という名前は浸透しなかったようです。
そんなポーターが海を渡り、アイルランドに上陸すると、大きな進化を遂げました。1778年、ギネス社のアーサー・ギネスが「スタウト」を考案します。当時は麦芽に税が課せられていたことから、税負担を軽減するために、麦芽化されていない大麦をローストして、原材料に使用したのです。
その独特の苦みや香りが評判となり、世の中に広まっていきました。「スタウト」とは「どっしりとした、頑丈な、強い」といった意味で、その強い香りと濃厚な味わいを表してします。
どちらも芳醇な味わいを楽しむビールのため、適温は11~15℃と高めです。キンキンに冷やさずに、それぞれのビールのコクや香りを楽しんでみてください。
【ポーター】
- 発酵の種類:上面発酵
- 色:ブラウン・ダークカラー
- アルコール度数:4~7度
- 適温:11℃
- 代表的なビール:サミエルスミス ポーター、ダブル エスプレッソ ビール
【スタウト】
- 発酵の種類:上面発酵
- 色:ダーク・ブラックカラー
- アルコール度数:4~7度
- 適温:15℃
- 代表的なビール:サミエルスミス スタウト
黒ビールはどうして黒い?
【黒ビールの話】
「黒ビール」とは、その名の通り黒色~濃褐色をしたビール。その独特な苦みや甘みに魅せられた人や、淡色ビールと黒ビールを1:1で混ぜ合わせる「ハーフ&ハーフ」が好きだという人も多いと思います。
ではこの黒ビールの黒い色は、一体どのように作られているのでしょう? 淡色ビールと醸造方法が違うのか、それともできあがったビールを着色しているのか……。実はコレ、使われている「麦芽」の違いによるものなのです。
フルーツビールなどを除き、ビールの色は麦芽で決まります。淡色ビールでは、80℃程度で焙燥(加熱によって乾燥させること)された、色の薄い「淡色麦芽」が使われます。対する黒ビールでは「淡色麦芽」に100℃以上の高温で焙煎された「濃色麦芽」が加えられます。
濃色麦芽には、その焙煎方法や温度によって「カラメル麦芽」「クリスタル麦芽」「チョコレート麦芽」「黒麦芽」など、さまざまな種類があります。これらを組み合わせることによって、濃褐色や黒色のビールが生まれるのです。
ちなみに「黒ビール」は、小麦を加えて作られる「ホワイト」と違って、ビアスタイルではありません。スタイルでいえば、下面発酵ビールなら「ドゥンケル」「シュバルツ」、上面発酵ビールであれば「ポーター」「スタウト」が黒ビールにあたります。
同じ黒ビールとはいっても、味わいはかなり違います。お気に入りの黒ビールを探して飲み比べをしてみるのも、楽しいかもしれませんね。
【代表的なドゥンケル】
- ホフブロイ ドゥンケル
- アインガー アルトバイエリッシュ ドゥンケル(樽のみ)
- ヴァイエンステファン ヴァイツェン ドゥンケル
【シュバルツ】
- 弊社取扱いビールに該当品なし
【代表的なポーター】
【代表的なスタウト】
【ハーフ&ハーフ】
「スタウト」や「ポーター」といった“黒ビール”と呼ばれる濃色ビールは、香りや味が強すぎて苦手という人もいると思います。そんな人におすすめしたいのが「ハーフ&ハーフ」という飲み方です。
これは馴染みのある色合いの淡色ビールと濃色ビールを1:1の割合で混ぜ合わせる飲み方。淡色ビールのさわやかな味わいが、濃色ビールの強い味わいを抑えてくれるので、濃色ビールを敬遠していた人も飲みやすいはずです。
このハーフ&ハーフのもうひとつの楽しみ方は“注ぎ方”です。実はこの飲み方、注ぐ順番で泡の色が違ってくるのです。淡色ビールを先に注ぐと泡が白くなり、濃色ビールを先に注ぐと泡は黒くなります。
泡が白くなるものを「ホワイトトップ」、黒くなるものを「ブラックトップ」と呼ぶのですが、違いは泡の色だけではありません。ホワイトトップだと淡色ビールのさわやかな香りがし、ブラックトップだと濃色ビールの甘い香りが強くなります。
使用するビールの種類でも味は違ってきますし、淡色ビールと濃色ビールの割合でも風味が変わってきます。さまざまな作り方を試してみて、お好みのハーフ&ハーフを作り上げてみるのも楽しいですね。
<おすすめのビール>
【花見団子&ビール】
ビールのつまみといえば、味の濃い料理や揚げ物などをイメージしますが、実は甘い食べ物がよく合うビールもあるのです。そこで今回は、お花見シーズン真っただ中なということで「花見団子」に合うビールを紹介しましょう。
ひと口に団子と言ってもいろいろあるので、団子の種類別に合うビールを紹介していきます。
【あん団子】あんこがたっぷり載った団子には、苦みが特徴の「ダークエール」「ブラウンエール」「ポーター」がおすすめです。あんこの甘さとビールの苦みが重なることで、ビールのコクが際立ちます。
【みたらし団子】しょう油のうま味とコクがおいしいみたらし団子には、酸味と苦みが強い「ボック」「ペールエール」「IPA」と相性が抜群。しょう油の酸味・香ばしさと、ビールの酸味・苦みとの相乗効果でおいしさが広がります。
【草団子】ヨモギのさわやかな風味には、同じくさわやかな味わいの「ホワイト」がピッタリ。とくにフルーティーな味わいの「ベルジャンホワイト」がおすすめです。ビールの香りのなかに、ヨモギの青い香りがほのかにしてきます。
<おすすめのビール>
あん団子
- サミエルスミス ポーター(イギリス)
- シメイ ホワイト(ベルギー)
みたらし団子
草団子
- オーガニック ライオン5(ベルギー)
- ジェード オーガニック ブランシェ(フランス)
ビールは「発酵」によって
味わいが変わる?<1>
【上面発酵】
麦やホップなどから作られる麦汁のなかの糖類を酵母が分解して、炭酸ガスとアルコールを生成する「発酵」によって作られるお酒がビールです。その発酵には「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」の3種類があり、発酵の仕方によってできあがるビールの種類が変わってきます。
そこで今回はその中のひとつ「上面発酵」について、解説していきましょう。
「上面発酵」とは、発酵が進むと麦汁の表面に酵母が浮かび上がる酵母を使った醸造方法です。発酵温度が15~20℃ほどと比較的高く、3~4日間という短い期間で発酵が終了します。
この上面発酵で作られるのが「上面発酵ビール」「エール」と呼ばれるビールです。非常に歴史のあるビールで、イギリスやベルギーでは、今も多くの人に愛されています。「エール」「IPA」「ヴァイツェン」「ホワイト」「ホワイトカクテル」「トラピスト」「アベイ」「スタウト」「ポーター」が、上面発酵ビールに属するスタイルです。
味わいは、フルーティーなものが多いですが、味や香りに多様性があるのもこのビールの特徴です。長い歴史のなかで、作られてきた地域の風土や生活が反映され、個性的でバラエティーに富んだビールが育まれてきました。
冷やして飲んでもおいしいですが、香りを楽しむために10℃以上の温度で味わうのがいいと言われています。よくビールは“ノド越し”や“キレ”だと言われますが、上面発酵ビールで、芳醇な味と香りをじっくりと味わってみてください。
<代表的な上面発酵ビール>
- クローネンブルグ ブラン(フランス)
- サミエルスミス スタウト(イギリス)
- ヴァイエンステファン へフヴァイス(ドイツ)
- シメイ ブルー(ベルギー)
- 白濁(ベルギー)
- IPA 100(イギリス)