今流行りの“クラフトビール”って何?
【クラフトビールの話】
ビール好きの人なら「クラフトビール」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。最近はクラフトビールを数多くそろえたお店もたくさんあって、ちょっとしたおしゃれスポットにもなっています。そんなクラフトビールですが、一般的なビールと何が違うのでしょう?
クラフトビールの人気が高いアメリカでは、クラフトブルワリー(小規模醸造所)の業界団体「ブルワーズ・アソシエーション」が、クラフトビールを定義しています。それによると…
- 小規模であること
- 独立していること
- 伝統的であること
となっています。
「小規模であること」とは、ビールの生産規模が小さいということ。年間生産量が600万バレル(約70万kl)以下であることが条件です。2011年までは200万バレル(約23kl)以下だったのですが、市場が拡大したことで上限が引き上げられました。アメリカでは、クラフトビールの人気が高いという証拠ですね。
「独立していること」とは、クラフトブルワリー以外の酒造メーカーに所有されたり、管理されたりしていないということです。具体的には、クラフトブルワリー以外の酒造メーカーの資本が25%未満であることが条件です。
そして「伝統的であること」とは、製造しているメインの製品が麦芽100%ビールであること、または生産する50%の製品が麦芽100%ビールであることとしています。しかし、香味の特徴を強めるために副原料を使っている場合は、麦芽100%でなくてもいいとされています。
しかしこれは、あくまでアメリカの定義。日本やヨーロッパの場合は、クラフトブルワリーの人気が高まると、大手酒造メーカーが傘下に収めてしまうことが多く、独立性が保たれないことが多いようです。
ですから、あまり細かい定義にはとらわれず、クラフトビールとは「ビール職人が作る良質な味わい深いビール」と捉えておくのがいいかもしれません。
ちなみに「日本ビール株式会社」で取り扱っているクラフトビールは、現在のクラフトビールブームのパイオニアであるアメリカの「サミュエルアダムス ボストンラガー」、強い苦みと香りがやみつきになるイギリスの「ダブルホップ モンスターIPA」、本場ベルギーで生産されている日本ビールオリジナルのクラフトビール「白濁(しろにごり)」などがあります。
「とりあえずビール!」もいいですが、どんな国で、どんな人が、何を思って作ったのかなぁ、なんて思いをはせながらクラフトビールを味わってみるのも、楽しいかもしれませんね。
ビアスタイルを知ろう!<6>
【IPA】
ビールの品ぞろえをウリにしているお店で、よく見かけるのが「IPA」という名前のビール。これは「インディア・ペールエール(India Pale Ale)」の略で「アイ・ピー・エー」と読みます。“インドのペールエール”という意味になるのですが、インドで作られたビールではありません。
このビールが誕生した当時、インドはイギリスの植民地でした。イギリスからインドまでペールエールを船で運んだのですが、イギリスからアフリカ大陸をまわり、赤道を2回またいでインドへたどり着くまでの長い航海で、ペールエールは腐ってしまったのです。
そこで防腐効果の高いホップを大量に使い、ペールエールの腐敗を抑えました。ホップの強い香りと苦みのあるIPAは、こうして誕生したのだといわれています。
今ではこの個性豊かでインパクトのある味わいが人気となり、アメリカを中心としたクラフトビール業界では、一番人気のスタイルとなっているようです。
そんなIPAのなかにも、通常のIPAよりもさらに多くのホップを使用して作られた「インペリアルIPA(ダブルIPA)」、アメリカ産のカスケードホップを中心に作られた「アメリカンIPA」、深煎りモルトを使用して香ばしさと苦みを増した「ブラックIPA」、ベルジャンホワイトをベースとした「ホワイトIPA」など、さまざまなスタイルがあります。
IPAを味わう際は、キンキンに冷やしてノド越しを楽しむというよりは、10~12℃と少し高めの温度で、ホップの香りと深い味わいを楽しみます。
普段飲んでいるビールがちょっと物足りない、そう感じてきたらIPAを味わってみてください。これまでとは違ったビールの楽しみが発見できるかもしれませんよ。
- 発酵の種類:上面発酵
- 色:アンバー~ブラウンカラー
- アルコール度数:5~7.5度
- 適温:10~12℃
- 代表的なビール:サミエルアダムス リーベルIPA、ダブルホップモンスター、IPA100