日本ビールスタッフの「気まぐれコラム」ビールがあればいつでも幸せ 日本ビールスタッフの「気まぐれコラム」ビールがあればいつでも幸せ

“ビールの魂”とも呼ばれる
【ホップの話】

ビール作りに欠かせない主原料のひとつ「ホップ」。ビール特有の香りや苦みを作り出すだけでなく、ビールの泡持ちをよくしたり、殺菌作用があったり、ビールに透明感を与えたりする働きもあります。

Green hops

ホップはアサ科カラハナソウ属のつる性植物で、収穫期の8~9月には10mほどの高さに成長します。ビールの醸造に使われるのは、松ぼっくりのような形をした花の部分「球花」です。この球花の中には「ルプリン」と呼ばれる黄色い粒が入っていて、これがビールの香りや苦みの成分になります。

ホップがビール作りに本格的に使われるようになったのは、14世紀ごろから。5000年以上と言われるビールの歴史を考えると、比較的最近のことです。ホップが使われる以前は、ハーブや香辛料を配合した「グルート」と呼ばれるものが使われていました。しかし、ホップのほうが味わいや防腐効果に優れていたことから、徐々に主流になっていきました。

そのホップの特徴を最大限活用して作られたのが「IPA(インディアンペールエール)」。かつて、イギリスから東インド会社に船でビールを運ぶ際、腐敗しないように防腐効果の高いホップを大量に使用して作られたビールです。今ではその強い苦みのある個性的な味わいが人気となっています。

そんなビールの味わいを決めるのに重要な役割を果たしているホップですが、大きく3種類に分けることができます。

ひとつは「ファインアロマホップ」。ほかのホップに比べて香りや苦みが穏やかで、上品な品種とされています。「アロマホップ」は香りが強いのが特徴。味わいは穏やかです。そして「ビターホップ」は苦み成分が多く含まれる品種で、スタウトなどに使われることが多い品種です。

“ビールの魂”と呼ばれることもあるホップ。次にビールを飲むときは、ホップを感じながら味わってみると、今までとは違って感じるかもしれませんね。

ビールの味わいは酵母で決まる!
【ビール酵母の話】

ビールをはじめ、お酒を作るうえで欠かせないのが「酵母」です。酵母とは5~10ミクロンほどの大きさの菌類で、卵のような形に小さな突起が出ている姿をしています。

酵母は糖類を食べ、酸素があるときは呼吸を行って炭酸ガスと水に分解、酸素がないときは発酵を行って炭酸ガスとアルコールに分解します。酵母の種類のひとつである「ビール酵母」は、このアルコール発酵で大量のアルコールを生産するとともに、優れた味と香りを作り出す特徴があります。

そのビール酵母のなかにも種類があって、大きく「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」に分けられます。上面発酵酵母は15~25℃の温度で発酵し、フルーティーな香りのもとであるエステルなどを多く作り出します。発酵の際に発酵液の表面に浮かび上がる性質を持つことから、このように呼ばれています。この上面発酵酵母で作られたビールを総称して「エールビール」と呼ぶことから「エール酵母」とも呼ばれています。

対する下面発酵酵母は、5~10℃前後の低温で発酵する酵母で、香味成分は多く発生しませんが、キレのある爽やかなノド越しを作り出します。発酵の際に酵母が沈むことからこの名が付けられています。下面発酵ビールは「ラガービール」と呼ばれることから、この酵母は「ラガー酵母」とも呼ばれています。

そんな酵母のなかにも、スッキリとキレのある味わいを生み出す酵母、豊かな香りが特徴の酵母、味に深みを与える酵母など、さまざまな種類があります。その中からどんな特徴の酵母を使うかによって、ビールの味わいも決まってくるのです。

ビールは冷やしすぎるとマズくなる?
【ビールの飲みごろ温度の話】

「ビールはキンキンに冷やすに限る!」とくに夏の暑い盛りなどは「グラスを凍らせて飲むのがいちばんだ」そんな声を聞くことがよくあります。確かに喉が渇いたときの冷えたビールは最高においしいですし、それを否定するつもりもありません。ですが冷やし過ぎは、ビールの味を悪くしてしまうのをご存知ですか?

ビールは3℃を下まわると、タンパク質や炭水化物の成分が変化して濁りが生じてしまいます。これを「寒冷混濁」と呼ぶのですが、これが生じてしまうとビール本来のおいしさを味わうことができません。また泡立ちも悪くなるので、見た目のおいしさも半減してしまいます。

それでは、どのくらいの温度で飲むのがいいのでしょう? 好みやスタイルにもよりますが、一般的なビールは6~8℃が目安だといわれています。夏の暑い日ならもう少しだけ低く、秋以降の気温が低い日はもう少しだけ高い温度がおいしく飲めるようです。

暑い日が多くなる夏はとくに意識しましょう。冷凍庫で急冷したり、凍らせたグラスにビールを注いだりせず、きちんと適温に冷やして飲めばおいしさもワンランクアップします。

ただしエールやスタウトといった、香りや味わいが豊かなビールは季節に関係なく10~13℃ほどが適温だといわれていますので、温度管理は慎重に。

ビアスタイルを知ろう!<5>
【フルーツビール】

「フルーツビール」と呼ばれるビールがあることをご存じでしょうか? その名前からも想像がつく通り、フルーツを使ったビールなのですが、ビールとジュースを混ぜ合わせたカクテルではありません。醸造の途中で生のフルーツやフルーツエキスを加えて熟成させるビールの1スタイルです。

一緒に熟成させずに、できあがったビールに果汁を混ぜて作るものもありますが、ベルギーなどの伝統的な製法では、発酵中に副原料として加えられるものが多いです。使われるフルーツは、チェリー、ラズベリー、カシス、ピーチ、レモン、オレンジ、青リンゴなど、さまざまな種類があります。

味わいはもちろんビールなのですが、その中に使われているフルーツの酸味や甘みがバランスよく含まれていて、とても飲みやすくなります。ビールの苦みがちょっと苦手だという人にも、おいしく飲めると思います。

また、栓を開けた瞬間からフルーツのさわやかな香りが広がり、グラスに注ぐとピンクや紫など、とてもビールとは思えない鮮やかな色合いが楽しめます。この香りと色を楽しむために、フルーツビールはやはりグラスに注いで飲みたいものです。

おすすめは飲み口がすぼまったチューリップ型のグラス。注いだときに香りが立ちやすく、またグラス内に香りがたまりやすいので、飲みながら香りを存分に楽しむことができます。

 

ビアスタイルを知ろう!<4>
【ホワイト】

前回、ドイツの伝統的な白ビール「ヴァイツェン」を紹介しましたが、このほかにも多くのビールファンを魅了している白ビールがあります。それは「ホワイト」と呼ばれる、ベルギーの上面発酵ビールです。ほかの白ビールと区別するために「ベルジャンスタイルホワイトエール」「ベルジャンホワイト」などと呼ばれることもあります。

このビールは、15世紀からベルギーのヒューガルデン村で醸造されてきましたが、1957年にピルスナー人気などの影響により製造が終了してしまいます。しかし1966年に製造が再開され、復活を遂げています。

そんなホワイトの特徴は、大麦麦芽と小麦麦芽、そして麦芽化されていない小麦を使って作られていること。この麦芽化されていない小麦のタンパク質と酵母の影響で白く濁っていることから「ホワイト」と呼ばれているのです。

また、コリアンダーやオレンジピールなどで香りづけがされているので、とてもフルーティーでスパイシーな、清涼感のある味わいが楽しめます。ほどよい酸味がヨーグルトのような風味も感じさせます。ホップの苦みが苦手だという人に、人気のあるスタイルです。

そんな爽やかな風味のホワイトは、白身魚のカルパッチョ、サーモンマリネ、魚介のアヒージョなど、酸味のある料理や魚介類と相性が抜群です。